レーザー延伸を利用した石英ガラス繊維の製造法開発

この研究では石英ガラス繊維の製造へのレーザー延伸適用可能性の評価を目的としている。
一般的なガラス繊維と比べて純度が高い石英ガラス繊維は、光ファイバー用途に加え、優れた誘電特性を持つため6Gを志向した高性能基板用に使用が拡大している。石英ガラス繊維は、棒状の素材を2000℃前後に加熱して引き伸ばすことで製造されるが、現状使用されている酸水素バーナーでは、燃焼によって生じる水との化学反応によって繊維が汚染され、誘電特性を悪化させることが問題である。この研究では、エネルギー密度が高く、対象物を瞬間的に高温まで加熱できるレーザー光を用い、石英ガラスを直接加熱することによる石英ガラス繊維生産の可能性探索と純度向上の実証を目指してきた。近年の研究により、レーザー光照射によって工業生産規模の直径の繊維を安定的に生産できることと、生産された石英ガラスで純度の大幅な改善が可能なことが実証された。さらに数値解析結と比較することで、破断倍率に繊維温度が大きく寄与することが確かめられている。しかし工業生産を前提とした場合、現状での生産速度(数百m/min)では不十分である。また生産速度向上は、得られる繊維の強度にも影響する可能性がある。そのため、現在は工業生産の実現に迫る実験、数値シミュレーションを行っている。

レーザー光の間歇照射延伸により作成した Thick & Thin 繊維の強化繊維としての利用

従来多く使われてきた繊維複合材料では、CF、GF等の高強度・高弾性率繊維を強化繊維とし、繊維表面との界面剥離強度が大きく強化繊維の強度を有効利用できるEpoxy樹脂などのMatrixと組み合わせることが多かった。これに対し最近では、形態保持やCrackの進展抑制(破壊予知の容易性向上)、破片の飛散・落下防止などの目的で、PC板やゴム、コンクリートなどに、柔軟な汎用繊維を添加するケースも増えてきた。これらの目的で使われる強化繊維には、引張強度だけでなくMatrixからの引抜強度も求められるが、繊維Matrix間の界面強度が弱い場合には引抜強度が小さくなりやすい。そこで本研究は、レーザー光を間歇照射しつつ延伸することで作成した“Thick&Thin”形状をもつモノフィラメントによる強化を目的としている。
これまでの研究により、この様にして作成したPPモノフィラメントに関して、Epoxy樹脂Matrixからの引抜力が均一延伸したモノフィラメントよりも明瞭に増加することが示された。またPETモノフィラメントに関して同様の検討を行ったが、Epoxy樹脂Matrixとの界面強度が十分大きいことから引抜力向上は認められず、おそらくThick部の体積緩和により、PET繊維自体の強度も低下してしまった。そのため現在、“Thick&Thin”形状が引抜力におよぼす影響を確認するのに適切な繊維・Matrixの組み合わせ、体積緩和を起こし難い紡糸・延伸条件などの模索を行っている。