溶融ブレンド紡糸で作成した Water Harvesting 繊維の集水性能評価

溶融紡糸による親疎水性Water Harvesting繊維の開発と評価を目的としている。
近年灌漑対策として、“Water Harvesting”と呼ばれる技術が注目されている。降水量が少ない地域でも気温が下がる夜間の湿度は100%を超えることを利用し、この際に水分を効率良く凝集・採取して緑化や耕作に活かそうという技術である。一般に疎水性材料と親水性材料を組み合わせた極細繊維が適していると考えられており、疎水性のPVDFと親水性を持つPANを混合したDMF溶液のエレクトロスピニングによるWater Harvesting機能を持つナノファイバーの作成が報告されている。しかし実用上は、地上に広く展開する必要があり、(半)砂漠という過酷な環境で長期間耐え、さらに安価でなければ普及が難しい。このため本研究では溶融紡糸によって繊維化できる組み合わせとして、疎水性のPPにNylon、PVOH、EvOH、変性PP等の親水性材料を溶融混合して得た繊維についてWater Harvesting性能を評価し、最適の組み合わせと、Water Harvesting性能の適切な評価法確立を目指している。

CNF 添加高分子素材の繊維化

本研究では「セルロースナノファイバー(CNF)」の繊維化を目的としている。
我々の身近にある「木」という天然材料から形成されるCNF。植物の構造の骨格を成している基本物質「セルロース」をほどいて再構成した繊維材料である。CNFは、炭素繊維の6分の1程度のコストで、車のボディから家電製品まであらゆる工業製品の材料の補強材として可能性を高い。今ままでの研究から得られた複合繊維の熱安定性と強度を増加させる製造条件に関する知見を活かし、フルオレンセルロースのCNF/高分子素材の複合繊維の作製へ適用を試みている。CNFの水酸基をフルオレンで置換した機能性フルオレンセルロース(FLCF)とNylonの混練で新たな機能性を持つCNF複合繊維の作製に挑んだが、まだFLCFの分散性に問題があり、臨んだ複合効果はまだ得られていない。そのため現在は、FLCFの分散性を向上できそうな添加剤、例えば尿素、カチオン系界面活性剤などを加えた複合繊維の作製と得られた複合繊維の構造および物性評価を行っている。

リサイクル PP の繊維化

 廃プラスチックのマテリアルリサイクルは、基本的に、樹脂選別や不純物除去の後、粉砕、洗浄したものやフレークを造粒機で溶融し粒状にしたものを原料として使います。再生原料は繊維工場、シート工場、成形工場などで再び溶融されて下敷き、防草シート、作業服、洗剤ボトルなどの製品に加工されるのです。しかし、繊維工場など現場では経験則に基づいた生産しかできていない。むしろ、高いバージン樹脂などの使用によるコストの構造など様々な問題が散々している。そこで本研究では小型混練を用いてリサイクル樹脂とバージン樹脂を混錬し、リサイクル繊維の作製を目的としている。その際、得られたリサイクル繊維の分子量分布や分子鎖の絡み合い点密度などを調査し、リサイクル繊維の構造形成メカニズムを明らかにする基礎研究を行う。さらに、リサイクル繊維の強度制御ができる樹脂混錬割合など基礎知見を得ることで、更なるリサイクル繊維の用度展開に役に立つ研究を目指している。