ごあいさつ

研究室の概要と活動目標

 私たちの研究グループでは、感覚計測工学に取り組んでいます。私たちは、人間と工業製品の間で起こる現象を理解し、人間が求める製品設計を実現する方法を提供し、消費者の要求を満たす製品設計の事例を通じて、新たな付加価値を創造する研究を目指しています。また、産業界をリードする次世代人材の育成を目指し、科学的な観察力と課題対応力を涵養する教育を行っています。研究と教育の両面から社会に貢献できる研究室であることを目指しています。

研究室のこだわり

 私たちは、多くの工業製品に囲まれて生活しています。その多くが繊維関連製品です。被服はもちろん、マスク、カーペット、カーテン、ソファー、自動車シート、寝具等、あらためて見渡すと私たちの生活がいかに繊維関連製品と密接に関わっているかを実感します。研究室のこだわりの一つが、この”繊維関連製品”を研究対象とすることにあります。私たちにとって最も身近な工業製品といえる繊維製品は常に快適であることが求められています。

研究室の歴史

 繊維関連製品の快適性に関する研究は、歴史的にみて日本人研究者が世界をリードしてきたと言えます。特に布の風合い(触り心地)に関する研究分野では、日本人研究者によって多くの研究成果が示されました。故・西松豊典信州大学名誉教授はその一人です。当時、西松豊典先生は、パイル織物をはじめとする2次元テキスタイル素材の風合い計測や自動車シートの座り心地評価の研究をしていました。2003年からは西松・金井研究室としての活動をスタートさせました。私たちは、研究対象を繊維関連製品全般に拡大し、快適性を計測・評価する方法について研究してきました。ここでの最大の課題は、”製品固有の特徴(素材、機能、形状)、人間個人の感覚の違いを含んだ複雑なデータをどのように扱い、あいまいな快適性を計測・評価するか”というものでした。当時の代表的な研究には、”着心地の数値化”があります。西松豊典先生の定年退職に伴い、2018年からは金井研究室として活動しています。

筋電図測定からスーツ着用の身体負担を評価
(右から2番目が西松先生、2006年)

研究室の体制の変化と新たな目標

 現在の私たちの活動は、これまでの経験と知識を基礎として、繊維製品の快適性評価に関わる計測・評価技術の研究を継続しています。2022年4月には、先進繊維工学コースに丸弘樹助教が着任し、金井・丸研究グループの体制で活動しています。また、2023年9月からは武内俊次特任准教授をスタッフに迎え、研究室の計測・制御技術の支援が加速しています。機械、機構技術は、小林史利特任助教が支援し、研究を実践的かつ迅速に推進する体制が整っています。この支援体制の下、”汎用的で効果的な快適性評価試験法の具体化と社会実装”と、快適性評価と製品設計をシームレスに繋ぐ”感覚計測工学の実践的研究(エビデンスベースドデザイン)”を目標に研究活動を促進しています。
 また、2024年6月から同年11月にベルギー王国のゲント大学繊維科学研究所に6か月間滞在し、スマートテキスタイルの教育・研究を学びました。スマートテキスタイルは、次代の成長分野に位置づけられていますが、応用分野の研究には課題があります。そこでK-Labでは、感覚計測×スマートテキスタイルによる”応用スマートテキスタイル”の研究プロジェクトを新たな柱として国際的な連携体制の下で新たな研究を加速しています。

黒色織物の見え方を説明する丸先生(2016年)

ゲント大学滞在中の様子(左からDr. Malengier, Dr. Hassan, Prof. Langenhove, 私、 2024年)