セミの抜け殻の謎を解く

ニイニイゼミの抜け殻は他のセミの抜け殻と大きく違います. 表面が砂で覆われているのです. どのようにして, この違いが生じているのか研究しました. ニイニイゼミの抜け殻から砂を取り除き, 表面を顕微鏡で観察した結果, 他のセミの抜け殻と比較して, 非常に多くの毛が生えていることが分かりました. また, ムチンという粘度の高い物質がニイニイゼミの抜け殻の表面にはあることを明らかにしました. さらに, 研究の過程でニイニイゼミをはじめクマゼミ, ミンミンゼミなど多くのセミの抜け殻の腹部にハスの葉の表面と同様の小さな凸凹構造があることを発見しました. こうした構造は撥水性を示すことが知られており, そのことはロータス効果と呼ばれています. セミの抜け殻ではその凸凹構造が水を弾いて気門からの空気の取り込みを確保していると考えられました. このように, これまで知られていなかったセミの抜け殻の秘密を明らかにすることに成功しました. 本研究に関する論文はThe Science of Nature誌に掲載されました.

Jun Murayama, Kazuo Yamazaki, Hiroshi Ogasawara, Hiroshi Moriwaki, The Science of Nature, 2025, 112:25.