環境が健全な状態かどうかを知るためには環境中の様々な物質, 生態系などの情報を得る必要があります. そのための分析法・解析手法を検討しています. まず, 環境を分析し, 環境汚染の状況がどのようなものか把握しなくてはいけません. 次に環境汚染の対策法を考える必要があります. 環境汚染対策の中でも, とくに ”安全な水”を作り, 全ての人に供給することは人類にとってもっとも重要な課題の一つです. 水の新しい浄化手法を開発することで, この課題と向き合っています.

研究紹介  環境の歴史を泥から読み解く

大阪城のお堀. ここで採取した泥を分析しました.

大阪城の北外堀は外部との水の出入りが少なく, 地下からの湧水により作られてから水が涸れたことがないそうです.この堀の底にたまっている泥は大気から降下してきた塵で形成されていると考えられます. 泥の層は底のほうほど昔, 空から降ってきた塵で上の方ほど最近降ってきた塵だと考えられます. お堀から泥の層を崩さずに試料を採取しました.深さごとの年代測定を行ったところ, 一番深い部分は1600年代前半, 上の層は1970年代につもった塵だということが分かりました. 深さごとに大気汚染物質のひとつである多環芳香族化合物という物質の濃度を測定したところ, 空襲のあった1945年の層で最も高い濃度を示しました. この結果は大阪の大気環境に最も大きなインパクトを与えたのは1600年以降では第二次世界大戦の空襲であるということを示唆しています.

Hiroshi Moriwaki, Kenshi Katahira, Osamu Yamamoto, Joji Fukuyama, Toshikazu Kamiura, Hideo Yamazaki, Shusaku Yoshikawa; Historical trends of polycyclic aromatic hydrocarbons in the reservoir sediment core at Osaka, Atmospheric Environ., 2005, 39/6, 1019-1025.

研究紹介   太陽の光を使って汚染物質を分解する触媒の開発

メチルオレンジを太陽光で分解しました.

太陽の光を利用して水中の汚染物質を分解する技術の開発はサステナブルな社会の実現のために役立つ考えられます. ペリレンをシリカの上に付着させた粉末を新規な光触媒として開発しました. この粉末を用いて, アゾ染料の一種であるメチルオレンジを可視光や太陽光で分解する反応を検討しました. 光励起したペリレンは高い還元力を有しており, アスコルビン酸ナトリウム共存下で効率良くメチルオレンジを分解することを発見しました. また, この粉末をカラムに充填し, メチルオレンジとアスコルビン酸ナトリウムを溶かした液を流し, そのカラムに光照射することで連続的にメチルオレンジを分解することにも成功しました.

Hiroshi Moriwaki, Yasutaka Akaishi, Michiya Akamine, Hisanao Usami; Photodegradation of environmental pollutants using perylene adsorbed on silica gel as a visible-light photocatalyst, Appl. Catal. B, 2017, 204, 456-464.

研究紹介   金ナノ粒子を金色にする

絵の部分が金色の金ナノ粒子です.

金ナノ粒子は金の塊に無い性質を持っています. 金ナノ粒子の色は赤から紫色をしていて, 触媒活性を持っています. ろ紙を鉛筆で塗り浸け, その上に金ナノ粒子を付着させると金ナノ粒子が金色になることを発見しました. 金ナノ粒子は水素化ホウ素ナトリウム存在下でニトロ化合物のニトロ基をアミノ基に還元する反応を触媒します. この金色の金ナノ粒子は鉛筆をつけていないろ紙に付着させた金ナノ粒子よりも高い触媒活性を有することを明らかにしました.

Yukari Kawabe, Takashi Ito, Hiroaki Yoshida, Hiroshi Moriwaki; Glowing gold nanoparticle coating: Restoring the lost property from bulk gold, Nanoscale, 2019, 11, 3786-3793.